中島美嘉 Forget Me Not

SMAPベスト盤を読み解く

SMAPベスト盤を読み解く

 

一つのアイドルグループが誕生したとき、そのグループとしての個性を探るには、デビュー曲を聴き込むのが何より手っ取り早い。バンドのように、“自然発生的に”できたチームと違い、アイドルのデビューには、本人たちの思いと同等に、プロデューサーや音楽ディレクター、マネージャーなど、多くの大人たちからも“夢”を託される。グループ結成からデビューまでに歳月を要した場合など、早くから応援してくれたファンの夢まで背負わなければならない。そうやって、デビュー曲の“歌詞”には如実に、様々な夢が反映される。アイドルは、そこに込められた思いを声に出して歌うことで、知らず識らずのうちに叶えてしまうのではないだろうか。まるで“言霊”のように。

 

 91年のデビューから“SMAPブレイク元年”の95年までに発売された10曲の中で、意外な人気に驚いたのはランキング7位の「どうしても君がいい」である。30位にランクインした「君は君だよ」のカップリングで、“ラブソングでハードに踊るSMAP”のクールなカッコ良さが、初期の段階で具現化された曲だ。そんな、“歌って踊るラブソング”が熱望される結果となった一方、冒頭でも述べたとおり、グループに込められた深い思いが伝わってくるのはやはりデビュー曲の「Can’t Stop!! -LOVING-」なのである。
歴代3位「世界に一つだけの花」を予見させた「Can’t Stop!! -LOVING-」

 

 先日、ついに総売上がオリコン歴代シングルランキング3位に躍り出た「世界に一つだけの花」をはじめ、たくさんの大ヒット曲を持つSMAPだが、「デビュー曲は?」と聞かれて、答えられる人はそう多くはないかもしれない。デビュー曲でオリコン1位を取れなかったせいか、“キャンスト”は、SMAP自身、ライブであまり歌ってこなかった。それだけに今回、ファン投票で決定すると聞いたとき、デビュー曲は収録されないかもしれないと、個人的には少し危惧していた。でも、蓋を開けてみれば、無事33位にランクイン。曲調は、明るくてキラキラした“ザ・アイドルソング”だが、その歌詞の内容に目を向ければ、将来的に「オリジナル スマイル」や「世界に一つだけの花」のような“大きな愛”を歌い上げている。“くじけそうなときにも抱きしめて”“君を幸せにする僕はここにいる”“愛を始めよう”などと、他者に対する温かいメッセージが満載で、さらには“S・M・A・P”というグループ名まで入っている。“夢を与える”ことがアイドルの使命だとすれば、こんなにデビュー曲に相応しい歌詞もない。SMAPに大勢の大人たちが託した夢や期待は、“ナンバーワンになること”ではなく、最初から“たくさんの人を幸せにすること”だったのである。

 

 この曲が、ファンの中であらためて脚光を浴びたのは、20周年のファンイベントを西武園ゆうえんちで開催したときだ。96年に脱退した森且行のことは、公の場ではそれまで滅多に話題にしてこなかったし、たまに口に出しても、あくまでさり気ない流れの中で、だった。それが20周年を境に、メンバー全員が森の話をオープンにするようになった。西武園ゆうえんちでは、デビュー当時の衣装と同じ赤と黄色の、派手なアイドル衣装に身を包み、嬉しそうに懐かしそうに、そして恥ずかしそうに、“キャンスト”を披露。3年後、中居正広がプロデュースした『SMAP×FNS27時間テレビ』(2014年・フジテレビ系)のノンストップライブのセットリストにも組み込まれた。
中居が号泣した「BEST FRIEND」、SMAPストーリーの要所で

 

 “恋愛”よりも、“友情”や“励まし”や“感謝”を歌うほうが、彼らにはしっくりくる。そんなイメージをお茶の間にも定着させたのが、96年に森且行が脱退する直前に、森を囲んで、5人で「BEST FRIEND」を歌った『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)だった。中居は涙で歌にならず、木村拓哉が機転を利かせ、歌い終わった後に、さり気なくいつもは中居がするはずのMCを買って出ていた。その無言の連携プレーも、一人一人の森に対するコメントも、何もかもが愛情と思いやりと、でも寂しさに満ちていた。後世に語り継がれる、テレビが生んだ名場面の一つだろう。その後もこの曲は、稲垣吾郎が活動自粛から復活したライブのオーラスに5人で歌われたり、2013年の『SMAP×SMAP SMAPはじめての5人旅スペシャル』(フジテレビ系)では、カラオケで香取慎吾がこの曲を入れたとき、「死んじゃう俺、この曲聴いたら」と呟き、草なぎ剛と香取の歌を聴きながら、中居がボロ泣きしたり。SMAPストーリーの要所要所で、お互いの思いをそっと伝え合えるような、メッセージソングになっていた。

 

 応援ソング、メッセージソング、友情を歌った曲などが溢れる現在だが、次々とヒットソングが生まれていた90年代、そのほとんどはラブソングだった。応援ソングはともかくとして、友情や人類愛を押し付けがましくなく歌えるのは、男性アイドルグループの特権だったのかもしれないと今になって思う。“キャンスト”や“ベスフレ”がなかったら、「世界に一つだけの花」は生まれなかったに違いない。

 

 

 

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